トリニティの最新事業承継 事例のご紹介③

トリニティの最新事業承継 事例のご紹介③

「会社分割を活用した不動産M&Aの手法」をテーマに、当社で現在取り組んでいる会社分割を活用した最新の事業承継スキームを、実際の事例を用いてお伝えしております。

 会社分割を活用した不動産M&Aの手法
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 第1回 事例紹介とご提案内容の比較、検討
 第2回 適格分割の要件と法務・税務論点1
 第3回 適格分割の要件と法務・税務論点2
 第4回 その他の論点とまとめ
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今回は第3回として、「会社分割を適格分割で行う場合の要件と法務・税務論点2」としまして、「適格分割を満たす要件は何か」についてお伝えいたします!

事例のおさらい(1)事例の概要


第1回でご紹介しました事例を、改めておさらいします。

(1)事例の概要
「有限会社A」
・この度の事業承継の対象となる会社。
・発行済株式の総数は400株。
 株主の内訳は、母200株、長女100株、二女100株。
・東京都内で戦後から地域密着型の事業を展開していた。
・有限会社A名義で、2箇所の不動産(X地とY地)を保有。
・X地にあった事業所は25年程前に廃止し、同地に会社名義で7階建の収益マンションを建築した。
・Y地の事業所は、自宅兼賃貸物件として所有している。
→賃貸物件には空室もあるが、積極的に入居者の募集を行っていない。
この建物に母と二女が住んでいる。
・有限会社Aから母と二女に対して給与が支給されている。

「亡父」
・有限会社Aの創業者。2年前に他界。
・亡父の遺産分割、相続手続きは済んでおり、その遺産分割の協議により、100%保有していた有限会社Aの株式は、母、長女、二女が法定相続割合に応じた株式数で保有。

「母(80歳)」
・有限会社Aの現在の代表取締役。
・会社の持株割合50%(200株)。
・Y地の建物に居住。判断能力あり。
・子供たちになるべく負担をかけたくないと考え、有限会社Aの所有する不動産(特にX地)を売却してもよいと考えている
・一方で、父と一緒に長年住み続けたY地から離れたくない、という気持ちがある。

「長女(55歳)」
・既婚。母とは別の住まい。
・持株割合25%(100株)。
・長女は現状、有限会社Aから金銭的なメリットを受けていない。
・不動産(特にX地の土地と建物)を売却し、その売却益を分けて欲しいと母と二女に主張。

「二女(50歳)」
・この度のご相談者。
・独身。Y地にて母と同居。
・持株割合25%(100株)。
・長女と二女は、性格のソリが合わないため、一緒に会社を経営できるような関係ではない。
・また、二女は自身で有限会社Aの事業を運営する意思はなく、会社の今後について どうすればよいか自分では判断できず、当社への相談に至る。

事例のおさらい(2)ご提案した内容


ご家族の感情面(母はY地を手元に残したい)と考え得る各スキームの費用の比較から、
【有限会社Aを、Y地を所有する新会社に税制適格で会社分割をし、X地を所有する有限会社Aのみを売却する】スキームを採用しました。
スキームの詳細
1)有限会社Aを税制適格で分割型会社分割によりY地を所有する新会社を設立する。(適格分割)
2)有限会社Aを(M&Aにより)売却する。
3)新会社にてY地の不動産を所有し、新会社で事業を継続する。

適格分割の要件は何か


上記のスキームを実現するためには、適格分割の要件を満たした会社分割を行う必要があります。

適格分割は、法人税法第2条第12号の9に、以下4つパターンについて、パターンごとにその要件が規定されています。
1.支配率100%グループ内の適格分割
2.支配率50%超100%未満グループ内の適格分割
3.支配率50%未満の共同事業を営むための適格分割
4.スピンオフ(特定事業の切り離し)のための適格分割
今回の事例の分割パターンは、分割型分割で、分割法人と分割承継法人それぞれと同一の者の間に完全支配関係があり、分割後その同一の者と分割承継法人との間に完全支配関係が継続することが見込まれている(支配率100%)パターンの適格分割でした。
※上記【1.】のパターンです。

そのため、今回の記事では、前述の適格分割のケースのうち、2.から4.のケースの説明は割愛します。

さて、支配率100%の分割型分割による適格分割の手続において、その要件は以下のとおりとなります。(法人税法第2条第12号の9)
要 件 ①分割法人と分割承継法人それぞれと同一の者の間に「完全支配関係」があること

②分割法人の株主に対して、分割承継法人の株式以外の資産が交付されないこと(金銭等不交付要件)
③分割型分割の場合、分割承継法人の株式が分割法人の株主の有する株式の割合に応じて交付されること(按分型要件)

上記④から⑥の要件は、前述の適格分割4つの ケースの2.の要件と同様のため、2.ケースの適格分割であればそのまま不動産取得税の非課税要件も満たせますが、今回の事例のような支配率100%グループ内の適格分割の場合は、不動産取得税の非課税要件のためにこの④から⑥の要件を満たしておく必要があり、注意が必要となります。

以上、今回は「適格分割の要件は?」についてお伝えしました。

※上記内容は、法人税法をはじめ関係法令上から読み取れる内容を元に構成しております。
この度の事例では、この事業承継スキームの構築から事案を担当する税理士の先生と共に行っており、実際の税務対応は、その税理士の先生にて行っております。

次回もぜひご期待ください。
本記事について疑問点等がございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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